ニュース
青少年雇用促進法が成立
平成27年9月11日、衆議院本会議で「勤労青少年福祉法等の一部を改正する法律」が可決・成立しました。
今回の改正では、「勤労青少年福祉法」が「青少年の雇用の促進等に関する法律」に改められ、その他、職業安定法、職業能力開発促進法等の関連法令もあわせて改正されています。
改正の概要については以下のとおりです。
特に注目されているのは、1(2)②の新卒者の求人申し込みの制限です。いわゆるブラック企業対策の一環として盛り込まれました。
原則として施行日は平成27年10月1日ですが、下記1(2)①及び②は平成28年3月1日、下記1(3)②、3(2)及び(3)は平成28年4月1日が施行日となります。
- 円滑な就職実現等に向けた取組の促進(勤労青少年福祉法等の一部改正)
(1)関係者の責務の明確化等
国、地方公共団体、事業主等の関係者の責務を明確化するとともに、関係者相互に連携を図ることとする。(2)適職選択のための取り組み促進
①職場情報については、新卒者の募集を行う企業に対し、企業規模を問わず、(ⅰ)幅広い情報提供を努力義務化、(ⅱ)応募者等から求めがあった場合は、3類型ごとに1つ以上の情報提供を義務化。
※3類型の情報:(ア)募集・採用に関する状況、(イ)労働時間等に関する状況、(ウ)職業能力の開発・向上に関する状況②ハローワークは、一定の労働関係法令違反の求人者について、新卒者の求人申込みを受理しないことができることとする。
③青少年に係る雇用管理の状況が優良な中小企業について、厚生労働大臣による新たな認定制度を設ける。
(3)職業能力の開発・向上及び自立の促進
①国は、地方公共団体等と連携し、青少年に対し、ジョブカード(職務経歴等記録書)の活用や職業訓練等の措置を講ずる。
②国は、いわゆるニート等の青少年に対し、特性に応じた相談機会の提供、職業生活における自立支援のための施設(地域 若者サポートステーション)の整備等の必要な措置を講ずる。(4)その他
① 勤労青少年福祉法の題名を「青少年の雇用の促進等に関する法律」に改める。
② ハローワークが学校と連携して職業指導等を行う対象として、「中退者」を位置付ける。(職業安定法改正) - 職業能力の開発・向上の支援(職業能力開発促進法の一部改正)
(1) ジョブカード(職務経歴等記録書)の普及・促進
国は、職務の経歴、職業能力等を明らかにする書面の様式を定め、その普及に努める。(2) キャリアコンサルタントの登録制の創設
キャリアコンサルタントを登録制とし、名称独占・守秘義務を規定する。
改正労働者派遣法が成立、9月30日に施行へ
平成27年9月11日、改正労働者派遣法が衆院本会議で可決されて成立しました。
最初に国会に提出されたのは平成26年3月でしたが、その後2回の廃案を経て、ようやく今回成立したものです。
主な改正内容は以下のとおりです。
1 労働者派遣事業が許可制に一本化
改正前は、一般労働者派遣事業は許可制、特定労働者派遣事業は届出制と区別されていましたが、本改正によって、すべての労働者派遣事業が許可制となります。
2 期間制限のルール変更
改正前は、いわゆる26業務以外の業務に対して原則1年(最長3年)の期間制限がされていましたが、本改正によって、全ての業務に対して、原則3年の期間制限(派遣先事業所単位と派遣労働者個人単位)がされることになります。
3 派遣労働者の雇用の安定とキャリアアップ
派遣元には、派遣労働者の雇用安定措置を講じる義務(1年以上3年未満の派遣の場合には努力義務)や、派遣労働者の伽リアップを図るための教育訓練等を実施する義務が課されます。
また、派遣先には、一定の場合に派遣労働者を雇い入れる努力義務や、募集情報提供義務などが課されます。
その他の改正内容については、厚生労働省のホームページで説明されていますので、ご参照ください。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386.html
改正労働者派遣法の施行は平成27年9月30日とされており、あまり余裕がありません。
現在、必要な政省令の整備も急ピッチで行われていますが、事業者の皆様も、情報収集と対応を至急行う必要があります。…
労働基準法改正法案が閣議決定、国会提出
平成27年4月3日、政府は労働基準法改正法案を閣議決定し、平成27年度通常国会(第189回国会)に提出しました。今国会で成立すれば、平成28年4月1日から施行されることになります。
ただし、労使双方に大きな影響を与える改正点がいくつもありますので、国会審議が順調に進むのか、予断を許しません。引き続き審議状況を注視していく必要があるでしょう。
今回の改正案の大きなポイントは以下の点です。
- 月60時間を超えた時間外労働に対する割増賃金の割増率を5割以上とする義務の中小企業に対する猶予の撤廃
ただし、この部分だけ、施行日を平成31年4月1日に猶予しています。 - 特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の創設
一定の要件(専門職、年収1075万円等)を満たす場合に労働時間規制の対象から除外するという制度です。ホワイトカラーエグゼンプションという呼称の方が有名です。 - フレックスタイム制の清算期間の延長
フレックスタイムの清算期間が1か月から3カ月に延長されます。 - 年休消化の義務付け
年10日以上の年休が付与される労働者に対して、5日は年休を取らせなければなりません。 - 企画業務型裁量労働制の対象業務の拡大
対象業務に2種類が追加されます。
日本テレビ、アナウンサーの内定取消をめぐる訴訟で和解
ミス東洋英和で日本テレビにアナウンサーとして内定していた大学4年生の女性が、クラブでのアルバイト経験を申告していなかったことを理由に内定を取り消されたところ同社を相手取って訴訟提起していた事件で、8日、和解が成立したことが明らかになりました。
報道によれば、裁判所から当事者に対して平成26年12月26日に和解勧告がなされていたようです。
内定については、法的には、将来の日付である入社日を開始日とする始期がついており、内定事由に書かれている事由が生じた場合に解約できる解約留保権が付された労働契約と解されています。
ですので、内定取消の可否は、既に成立している労働契約につき、留保された解約権を行使して解約するという問題になります。
留保された解約権の行使が可能な場合は、一般的には、「採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取消すことが解約留保権の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認できる」事実が後に発覚した場合とされています(大日本印刷事件 最高裁昭和54年7月20日判決)。
本件の場合、クラブでのアルバイト経験という事実が解約留保権の趣旨、目的に照らして内定取消事由として客観的に合理的と認められ社会通念上相当と言える場合には、内定取消が可能となります。
もっとも、そのためには、会社側が上記事由を立証しなければならず、かつ、クラブでのアルバイト経験をどう評価するか(例えば、清廉性を欠くと評価するか特段問題がないと評価するか)は人によって様々ですので、日本テレビとしても判決に至った場合のリスクが残る事案であったと思われます。
したがって、日本テレビが裁判所による早期の和解勧告に応じたということは、合理的な選択であったように思われます。
…
青山学院大・高等部・中等部等の教職員の一部が、一時金の減額を違法として差額を請求して、学校法人青山学院を提訴
青山学院大などを運営して著名な学校法人青山学院が、賞与に当たる一時金を例年よりも減額して支給したところ、昨年末に、教職員の一部がこれを違法として差額を請求して東京地裁に提訴したことが明らかになりました。
青山学院は一時金の金額について算出方法を就業規則に定めていたとのことでそれを削除したうえで、これまでの実績よりも少ない支給を行ったとのことです。したがって、本件は、就業規則の不利益変更の問題ということになります。
使用者が就業規則を不利益な方向に一方的に変更してしまった場合は労働契約法に規定があります。
労働契約法
第10条
使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。
要するに不利益変更が合理的といえるかということになり、上記の規定中に現れている事情の総合考慮ということになります。報道からうかがえる事情で法律上意味を持ってきそうな事実は、経営状態、金額を算出する内容を削除したということ、組合との話し合い程度、削減した金額の多寡などということになりましょう。
もっとも本件には特徴的なところがあります。一般的によくある給与が減額された場合の争いでは、当然、不利益になった金額の多寡が検討されますが、これは給与の内容を引き下げる変更をしているためで、金額の多寡は変更後の規定の内容そのものであるのです。
それに対して本件は算出方法自体をなくしてしまって、そのうえで適宜の金額を支給しているので、金額の多寡とは別の問題となる可能性があります。本件はこの点が特徴的といえると思われます。…
厚生労働省労働政策審議会労働条件分科会、ホワイトカラー・エグゼンプションについて健康維持策の義務付けを議論
ホワイトカラー・エグゼンプションについての審議会における議論が進んでおり、通常国会への提出を見据えて、適用に当たっての細部の条件について検討が進んでいます。
12月24日に行われた厚生労働省労働政策審議会労働条件分科会第121回労働政策審議会労働条件分科会において、ホワイトカラー・エグゼンプションについては、健康確保のために義務付ける内容が議論されました。
まだ、議事録が公開されていないため、議論の内容は報道によるしかありませんが、健康維持策の義務付けで合意が得らえたとされています。
報道によると健康維持策としては以下のようなものが上がった模様です。
- 労働時間や在社時間の把握義務
- 長時間労働が疑われる場合には産業医の面談を受けさせる
- 一定日数の休日取得 or 労働時間の上限 or 次の勤務との間に一定時間の休息の確保
1と2は現在の裁量労働制でも必要とされる措置であり、この制度についても裁量労働制とパラレルに捉えていることが伺われます。しかし、ホワイトカラー・エグゼンプションは、深夜、休日の割増賃金も発生しないようになることが前提として議論されていることから、裁量労働制とは異なる中身になることにも注意が必要でしょう。
特徴的なのは3ですが、3つの選択肢からいずれかを採用することを求める方向とされています。
連続労働を抑制する必要がある観点からの歯止めになるものであり、むしろ年単位の変形労働制での仕組みにちかいものがあります。年単位の変形労働時間制では総労働時間の枠がありますし、連続しての長時間労働が続かないように限界がいくつかもうけられていますので、それに近いものがあるといえるでしょう。
また、勤務と勤務の間の休息については、日本法上は新しい発想といえます。
次の検討課題としては、年収や職種の範囲に移るものとされています。…
群馬大学、研究者に対するパワハラで教授を懲戒解雇
群馬大学でパワハラを理由に教授が懲戒解雇された事案が発生したことが明らかになりました。
群馬大学による直接のリリースはないため報道によると、事実として認定されている行為は以下のようなものとされています。
- 退職や休日出勤を強要
- 長時間にわたり叱責、侮辱
- 女性に対し、「結婚は三角、出産はバツ」との趣旨の発言
この結果、上記行為を受けた助教及び講師合計5名のうち、2名が退職したとのことです。また、複数がうつ状態になって休職をとっているとのことです。
群馬大学は、当初、諭旨解雇にしようとしたところですが、拒否したため懲戒解雇としたとなっています。諭旨解雇は、法的に正確な定義があるわけではありませんが、一般的には期限を定めて退職届の提出を促し、提出がされない場合には懲戒解雇とするものであり、群馬大学の厳しい対応が伺われますが、一方でここまで事象が積み重なってからの処分であり、もっと迅速な対応をするべきだったのではないかとの批判も出ている模様です。…
厚生労働省、セクハラ、マタハラに関して初の実態調査を実施へ
厚生労働省がマタハラ及びセクハラについて初の実態調査を行うことになりました。
来年実施予定とのことですが、現在在職中の労働者に限ることなく、元労働者も含めて調査を行うことになる模様です。
報道によると、以下のような調査内容とされています。
- 被害の具体的な内容
- 雇用形態や加害者の立場
- 勤務先に申告したかどうか
- 勤務先の対応
- 非正規雇用の女性については、解雇や雇い止めなど不当な扱いを受けていないか
日立、全世界で共通の人事制度を構築。管理職に世界共通のグレード制度を導入して日本国内の管理職の賃金から年功的要素を廃止
日立が世界の管理職の処遇を共通化することで、日本国内に限ると年功的な要素がなくなったことが明らかになりました。
端的に言うと、日立の管理職の人事制度は、すでに日本の伝統的な職能等級制度からは脱皮しており、資格給と職位加算給の合体という内容であったとされています。
これは、上記リリース内の説明によると、職能資格制度と、アメリカで生まれた職務等級制度を日本風にアレンジした役割等級制度の中間程度のものであったようです。しかし、それでもまだ整理しきれていない職位があるなどの理由から、役割等級で全世界の仕事を貫くことで役割に応じて賃金を支給する仕組みを全世界で展開することになる模様です。…
厚木労働基準監督署長、社長の指示に従って事務作業などをしていた元専務を労働者として、元専務がうつ病で自殺したことについて労災認定
労災保険法上の労働者は、労働基準法上の労働者と同じ概念とされています。したがって、役員は労働者ではないことになるのが原則なのですが、労働者なのか経営者なのかということは実質的に判断されるので、指揮監督下で労働していたのかという点から判断されます。
労働基準監督署長による労災の認定という形で、役員なのか労働者なのかという点が問題となった事例で、労働者認定がされたことが明らかになりました。
報道によると、神奈川県大和市の物流業「アズマインターナショナル」の元専務が2011年6月に自殺したとのことですが、この件について厚木労働基準監督署長が、パワハラや過労によるうつ病が原因として労災認定したことが判明しました。遺族の代理人弁護士によると、専務は実態は社長の指示に従って事務作業を行うなど「名ばかり専務」だったとされています。 また、男性の手帳からは、自殺前の半年間に月百時間を超える残業が三回あったことが判明。月二回ほどは会社駐車場の車の中で未明に仮眠を取る状況が続いていたともされています。
名ばかり専務という、名ばかり管理職とパラレルのような取り扱い方になっていますが、役員なのか労働者なのかは昔からある問題であり、労働の実態に関しての事実認定がされたからこそ、労災認定がされているものと思われます。
労働基準法の労働者性の判断は、指揮監督下で労働していたかという点がメルクマールですが、上記で引用したとおり、専務のしていた作業内容などから実質判断がされているのではないかと憶測されます。報道によると、社長から「死ね」といわれたパワハラがあったということも言及されているのですが、労働者だからこそのことであるという間接事実にもなるかもしれませんが、あくまで労働者性の判断としては、指揮監督下での労働と評価される内容であったという点になるのだと思われます。…