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トヨタ自動車が在宅勤務制度の拡充を検討、育児中社員以外も週1日2時間出社でOK

トヨタ自動車は、10月下旬、一定の勤務年数を経た事務系と技術系の社員を対象に、終日の在宅勤務制度を拡充する方向で、労働組合に対し在宅勤務に関する新制度を提案しました。提案によると、在宅勤務制度を利用するには上司の了承が必要となりますが、週1日2時間のみ出社すれば足り、それ以外は、終日自宅で仕事をすることができるとのことです。
トヨタ自動車は、4月から、1歳未満の子どもを持つ従業員に限って在宅勤務を認めていましたが、今後さらに対象を拡大することになります。働き方の選択肢を広げることで、優秀な人材を確保するとともに、生産性の向上を図ることに狙いがあるということです。

在宅勤務制度は労働条件の変更に該当するため、同制度の導入にあたっては、就業規則の変更等が必要になります。また、在宅勤務であっても労働時間を適正に管理しなければなりませんし、情報通信機器の整備等環境を構築しなければならないなど多くの課題があります。

そのため、終日在宅勤務を導入する大手企業は、今のところ、日産自動車やNTTデータ、損保ジャパン日本興亜、リクルートホールディングなどに限られています。もっとも、政府は、週1日以上の終日在宅勤務をする人の割合を2020年までに10%に増やすという目標を掲げています。今後、在宅勤務制度を導入する企業は増えていく可能性があります。


青少年雇用促進法が成立

平成27年9月11日、衆議院本会議で「勤労青少年福祉法等の一部を改正する法律」が可決・成立しました。
今回の改正では、「勤労青少年福祉法」が「青少年の雇用の促進等に関する法律」に改められ、その他、職業安定法、職業能力開発促進法等の関連法令もあわせて改正されています。

改正の概要については以下のとおりです。
特に注目されているのは、1(2)②の新卒者の求人申し込みの制限です。いわゆるブラック企業対策の一環として盛り込まれました。
原則として施行日は平成27年10月1日ですが、下記1(2)①及び②は平成28年3月1日、下記1(3)②、3(2)及び(3)は平成28年4月1日が施行日となります。

  1. 円滑な就職実現等に向けた取組の促進(勤労青少年福祉法等の一部改正)
    (1)関係者の責務の明確化等
    国、地方公共団体、事業主等の関係者の責務を明確化するとともに、関係者相互に連携を図ることとする。

    (2)適職選択のための取り組み促進
    ①職場情報については、新卒者の募集を行う企業に対し、企業規模を問わず、(ⅰ)幅広い情報提供を努力義務化、(ⅱ)応募者等から求めがあった場合は、3類型ごとに1つ以上の情報提供を義務化
    ※3類型の情報:(ア)募集・採用に関する状況、(イ)労働時間等に関する状況、(ウ)職業能力の開発・向上に関する状況

    ②ハローワークは、一定の労働関係法令違反の求人者について、新卒者の求人申込みを受理しないことができることとする。

    ③青少年に係る雇用管理の状況が優良な中小企業について、厚生労働大臣による新たな認定制度を設ける。

    (3)職業能力の開発・向上及び自立の促進
    ①国は、地方公共団体等と連携し、青少年に対し、ジョブカード(職務経歴等記録書)の活用や職業訓練等の措置を講ずる。
    ②国は、いわゆるニート等の青少年に対し、特性に応じた相談機会の提供、職業生活における自立支援のための施設(地域 若者サポートステーション)の整備等の必要な措置を講ずる。

    (4)その他
    ① 勤労青少年福祉法の題名を「青少年の雇用の促進等に関する法律」に改める。
    ② ハローワークが学校と連携して職業指導等を行う対象として、「中退者」を位置付ける。(職業安定法改正)

  2. 職業能力の開発・向上の支援(職業能力開発促進法の一部改正)
    (1) ジョブカード(職務経歴等記録書)の普及・促進
    国は、職務の経歴、職業能力等を明らかにする書面の様式を定め、その普及に努める。

    (2) キャリアコンサルタントの登録制の創設
    キャリアコンサルタントを登録制とし、名称独占・守秘義務を規定する。

    (3) 対人サービス分野等を対象にした技能検定制度の整備
    技能検定の実技試験について、厚生労働省令で定めるところにより検定職種ごと、実践的な能力評価の実施方法を規定する。


来年4月施行の「女性活躍推進法」、300万人就業を目指す「基本方針」決定

平成27年8月28日、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)」が成立し、9月25日、政府は、同法に基づき、企業が女性登用を進める際の基本的な考え方となる「基本方針」を閣議決定しました。

基本方針は、働きたいのに育児や介護等を理由に働くことのできない約300万人の就業実現を目指し、出産や育児を機に退職した女性の経験者採用や再雇用など女性の積極採用を求めることを主な柱としています。また、配偶者控除などの税制・社会保障制度の早期見直し等も盛り込むとともに、女性の活躍に関する取組の実施状況が優良な企業に対する認定制度も打ち出しました。

平成28年4月1日に施行される女性活躍推進法では、常時雇用する労働者の数が301人以上の事業主に対し、施行日までに、以下の準備をすることを求めています(300人以下の事業主は、努力目標です)。ここにいう労働者には、パートや契約社員であっても、1年以上継続して雇用されているなど、事実上期間の定めなく雇用されている労働者も含まれますので、注意が必要です。

(1)自社の女性の活躍状況の把握・課題分析

自社の女性の活躍状況(①採用者に占める女性比率、②勤続年数の男女差、③労働時間の状況、④管理職に占める女性比率)を把握し、課題分析を行う必要があります。

(2)行動計画の策定・届出、社内通知、公表

(1)の結果を踏まえ、女性の活躍推進に向けた①行動計画の策定、②都道府県労働局への届出、③労働者への周知、④外部への公表を行う必要があります。①行動計画には、(a)計画期間、(b)数値目標、(c)取組内容、(d)取組の実施時期を盛り込むことが必要です。

(3)情報公表

自社の女性の活躍に関する情報を公表する必要があります。


改正労働者派遣法が成立、9月30日に施行へ

平成27年9月11日、改正労働者派遣法が衆院本会議で可決されて成立しました。
最初に国会に提出されたのは平成26年3月でしたが、その後2回の廃案を経て、ようやく今回成立したものです。

主な改正内容は以下のとおりです。

1 労働者派遣事業が許可制に一本化
改正前は、一般労働者派遣事業は許可制、特定労働者派遣事業は届出制と区別されていましたが、本改正によって、すべての労働者派遣事業が許可制となります。

2 期間制限のルール変更
改正前は、いわゆる26業務以外の業務に対して原則1年(最長3年)の期間制限がされていましたが、本改正によって、全ての業務に対して、原則3年の期間制限(派遣先事業所単位と派遣労働者個人単位)がされることになります。

3 派遣労働者の雇用の安定とキャリアアップ
派遣元には、派遣労働者の雇用安定措置を講じる義務(1年以上3年未満の派遣の場合には努力義務)や、派遣労働者の伽リアップを図るための教育訓練等を実施する義務が課されます。
また、派遣先には、一定の場合に派遣労働者を雇い入れる努力義務や、募集情報提供義務などが課されます。

その他の改正内容については、厚生労働省のホームページで説明されていますので、ご参照ください。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386.html

改正労働者派遣法の施行は平成27年9月30日とされており、あまり余裕がありません。
現在、必要な政省令の整備も急ピッチで行われていますが、事業者の皆様も、情報収集と対応を至急行う必要があります。


KDDI、退社してから出社するまで11時間あける制度を全社員に対して実施

平成27年7月4日付の日本経済新聞の報道で、KDDIが、労働日と労働日の間の退社から次の出社までの時間について一定時間を必ずあける仕組みを導入したことが明らかになりました。

同報道によると、対象は全社員とされ、11時間あけることという制度である模様で、就業規則を改定して、勤務間のインターバルを規定するなどの方法によって導入がされている模様です。

労働基準法の労働時間規制は、総労働時間に着目している内容であり、しかも36協定を締結の上、割増賃金を支払えば、実質的に労働時間の上限は極めて高くなってしまうのが日本の法制度となっています。

しかし、ヨーロッパでは、このような立法技術とは異なった発想に立って、労働時間と労働時間の間に一定の時間を空けることを求めるというタイプの規制が存在します。

現在、労働基準法の改正案が国会に提出されていますが、ホワイトカラーエグゼンプションが内容に含まれていますが、この改正案の検討の過程において、労働時間が過大にならないようにするための仕組みも検討されており、その前提の調査研究としてヨーロッパの各種法制度も対象となっていました。

結果的に改正案には取り入られませんでしたが、今回のKDDIの取り組みは、諸外国の立法例を社内制度として実現する仕組みといえ、大変先進的な取り組みといえそうです。


平成27年4月1日から改正パートタイム労働法施行

以前よりお伝えしている改正パートタイム労働法が、平成27年4月1日から施行されました。改正のポイントは以下のとおりです。改正法では、厚生労働大臣の勧告に従わない事業主名の公表や虚偽の報告などをした事業主に対する過料等の規定も新設されています。パートタイム労働者を雇用している企業では、法改正に応じた実務対応が急務といえるでしょう。

1.正社員と差別的取扱いが禁止されるパートタイム労働者の拡大

従前、正社員と正社員と差別的取扱いが禁止されるパートタイム労働者は

①職務内容が正社員と同一であること

②人材活用の仕組みが正社員と同一であること

③無期労働契約を締結していること

とされていましたが、改正後は、①②にさえ該当すれば、正社員との差別的取り扱いが禁止されるようになりました。すなわち、有期労働契約を締結しているパートタイム労働者であっても、職務内容や人材活用の仕組み(人事異動の有無やその範囲等)が正社員と同じであれば、各種手当等を含む賃金、福利厚生施設の利用、教育訓練等全ての待遇について、正社員と同様に取り扱わなければなりません。

2.「短時間労働者の待遇の原則」の新設

事業主が、雇用するパートタイム労働者の待遇と正社員の待遇を相違させる場合は、その待遇の相違は、職務の内容、人材活用の仕組み、その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならないとする、広く全ての短時間労働者を対象とした待遇の原則の規定が創設されました。

3.パートタイム労働者雇入れ時の事業主による説明義務の新設

事業主は、パートタイム労働者を雇い入れたとき、また、パートタイム労働者から説明を求められた場合に、実施する雇用管理の改善措置の内容について、パートタイム労働者が理解できるよう説明しなければなりません。具体的には、賃金制度、教育訓練、福利厚生施設の利用、正社員転換推進措置の内容等について説明する必要があり、パートタイム労働者から説明を求められた場合には、どの要素をどう勘案して賃金を決定したか、どの教育訓練や福利厚生施設がなぜ使えるのか、なぜ使えないのか、正社員への転換推進措置の決定あたり何を考慮したか等について、説明しなければなりません。

4.パートタイム労働者からの相談に対応するための体制整備の義務の新設

事業主は、パートタイム労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備しなければなりません。

また、パートタイム労働者を雇い入れたときに、事業主が文書の交付などにより明示しなければならない事項に「相談窓口」が追加されました。具体的には、労働条件通知書に相談担当者の氏名、相談担当の役職、相談担当部署等を記載することになります。なお、相談を受ける体制が整っておりそこに連絡すれば相談に乗ってもらえることが要求されていますので、相談担当者の名前まで記載しなくても、部署名等を記載すれば足りるものと解されます。


労働基準法改正法案が閣議決定、国会提出

平成27年4月3日、政府は労働基準法改正法案を閣議決定し、平成27年度通常国会(第189回国会)に提出しました。今国会で成立すれば、平成28年4月1日から施行されることになります。
ただし、労使双方に大きな影響を与える改正点がいくつもありますので、国会審議が順調に進むのか、予断を許しません。引き続き審議状況を注視していく必要があるでしょう。

今回の改正案の大きなポイントは以下の点です。

  1. 月60時間を超えた時間外労働に対する割増賃金の割増率を5割以上とする義務の中小企業に対する猶予の撤廃
    ただし、この部分だけ、施行日を平成31年4月1日に猶予しています。
  2. 特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の創設
    一定の要件(専門職、年収1075万円等)を満たす場合に労働時間規制の対象から除外するという制度です。ホワイトカラーエグゼンプションという呼称の方が有名です。
  3. フレックスタイム制の清算期間の延長
    フレックスタイムの清算期間が1か月から3カ月に延長されます。
  4. 年休消化の義務付け
    年10日以上の年休が付与される労働者に対して、5日は年休を取らせなければなりません。
  5. 企画業務型裁量労働制の対象業務の拡大
    対象業務に2種類が追加されます。

日本テレビ、アナウンサーの内定取消をめぐる訴訟で和解

ミス東洋英和で日本テレビにアナウンサーとして内定していた大学4年生の女性が、クラブでのアルバイト経験を申告していなかったことを理由に内定を取り消されたところ同社を相手取って訴訟提起していた事件で、8日、和解が成立したことが明らかになりました。

報道によれば、裁判所から当事者に対して平成26年12月26日に和解勧告がなされていたようです。

内定については、法的には、将来の日付である入社日を開始日とする始期がついており、内定事由に書かれている事由が生じた場合に解約できる解約留保権が付された労働契約と解されています。

ですので、内定取消の可否は、既に成立している労働契約につき、留保された解約権を行使して解約するという問題になります。

留保された解約権の行使が可能な場合は、一般的には、「採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取消すことが解約留保権の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認できる」事実が後に発覚した場合とされています(大日本印刷事件 最高裁昭和54年7月20日判決)。

本件の場合、クラブでのアルバイト経験という事実が解約留保権の趣旨、目的に照らして内定取消事由として客観的に合理的と認められ社会通念上相当と言える場合には、内定取消が可能となります。

もっとも、そのためには、会社側が上記事由を立証しなければならず、かつ、クラブでのアルバイト経験をどう評価するか(例えば、清廉性を欠くと評価するか特段問題がないと評価するか)は人によって様々ですので、日本テレビとしても判決に至った場合のリスクが残る事案であったと思われます。

したがって、日本テレビが裁判所による早期の和解勧告に応じたということは、合理的な選択であったように思われます。

 


厚生労働省、介護休業の複数回取得を可能とするよう育児・介護休業法改正へ

現在、会社は、家族一人当たり要介護状態になるごとに、通じて93日の介護休業を認めることが義務付けられています。

育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律

(介護休業期間)

第十五条  介護休業申出をした労働者がその期間中は介護休業をすることができる期間(以下「介護休業期間」という。)は、当該介護休業申出に係る介護休業開始予定日とされた日から介護休業終了予定日とされた日(その日が当該介護休業開始予定日とされた日から起算して九十三日から当該労働者の当該介護休業申出に係る対象家族についての介護休業等日数を差し引いた日数を経過する日より後の日であるときは、当該経過する日。第三項において同じ。)までの間とする。

このように休業期間が比較的短めになっているのは、いずれは介護サービスを利用することを想定しており、それまでの間に臨時的に家族が対応するような利用の仕方を前提としているためです。

しかし、実際のところ、家族が介護にあたることが常態化し、仕事との両立が難しくなり、介護離職が起きていると指摘される状況になっています。そこで、仕事と介護の両立がしやすい環境を整え、特に、管理職等の重要ポストにある40~50歳代の人の離職を防ぐため、厚生労働省は、介護休業を拡充する方向で、育児・介護休業法を改正し、2017年の施行を目指していることが明らかになりました。

報道によると、まず、現在家族1人につき原則1回に限っている休みを、分割して複数回取得できるようにするとのことです。もっとも、雇用管理の観点から2週間以上の日数という制限は設けることが検討されているようです。

また、介護休業の際は無給とすることが一般ですが、この場合の賃金の補填として、現在、雇用保険料から介護休業給付金が支給されています。改正後は、現在の財源に加え、雇用保険の積立金を用いることを検討しており、当面は雇用保険料率の増加はしなくても済むと見込んでいる模様です。


青山学院大・高等部・中等部等の教職員の一部が、一時金の減額を違法として差額を請求して、学校法人青山学院を提訴

青山学院大などを運営して著名な学校法人青山学院が、賞与に当たる一時金を例年よりも減額して支給したところ、昨年末に、教職員の一部がこれを違法として差額を請求して東京地裁に提訴したことが明らかになりました。

青山学院は一時金の金額について算出方法を就業規則に定めていたとのことでそれを削除したうえで、これまでの実績よりも少ない支給を行ったとのことです。したがって、本件は、就業規則の不利益変更の問題ということになります。

使用者が就業規則を不利益な方向に一方的に変更してしまった場合は労働契約法に規定があります。

労働契約法

第10条 
使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。

要するに不利益変更が合理的といえるかということになり、上記の規定中に現れている事情の総合考慮ということになります。報道からうかがえる事情で法律上意味を持ってきそうな事実は、経営状態、金額を算出する内容を削除したということ、組合との話し合い程度、削減した金額の多寡などということになりましょう。

もっとも本件には特徴的なところがあります。一般的によくある給与が減額された場合の争いでは、当然、不利益になった金額の多寡が検討されますが、これは給与の内容を引き下げる変更をしているためで、金額の多寡は変更後の規定の内容そのものであるのです。

それに対して本件は算出方法自体をなくしてしまって、そのうえで適宜の金額を支給しているので、金額の多寡とは別の問題となる可能性があります。本件はこの点が特徴的といえると思われます。