Tag ‘労災保険法’

肥後銀行、自殺した行員の遺族からの損害賠償請求訴訟において、長時間労働と自殺との因果関係を認める

肥後銀行において、長時間労働について刑事事件となる事態になったことはすでにお伝えしましたが、この件はきっかけが行員の自殺であり、長時間労働による自殺と見受けられる点があったというものでした。刑事罰のほかに自殺については、労災認定がすでにされています。

この件では、自殺した行員の遺族から同行に対して損害賠償請求訴訟が提起されており、その訴訟の中で、長時間労働と自殺の因果関係について同行が認めたことが明らかになりました。

因果関係そのものは、規範的要件ではなく、普通の要件事実ですので、自白の対象になりますが、本件のような場合には、評価に近いものが出てきますので、被告の側で因果関係を認めるという判断もなかなか難しいものがあったように思われます。…


新宿労働基準監督署がカルテや会員制交流サイトの記述などを総合して過労による自殺として労災認定

いわゆる過労自殺の労災認定の事実認定について興味深い判断がされたことが明らかになりました。

東京都のアニメ製作会社に勤めていた労働者がやめた後の2010年10月に自殺したとのことなのですが、報道によると本件は以下のような事実があった模様です。

  • 当該会社はタイムカード等による労働時間管理をしていなかった。
  • 在職中からすでにうつ病にり患して通院していた。
  • 通院していた医療機関のカルテに「月600時間労働」との記載あり
  • 労働者は会員制交流サイト内に記述をしていたことがあり、その記述からうつ病り患の時期の主張が行われた。

新宿労働基準監督署は、発症の時期は特定していないものの、過労でうつ病にり患して、その2から4か月前には月100時間を超える残業があったと認定している模様です。

死亡の前の労働時間はタイムカードがないことから判然としないものの、カルテに本人から聞き取りをしたと思しき内容で労働時間についての記載があったこと、及び死亡より前のうつ病へのり患に関する事実に関して、会員制交流サイトでの記述から発症時期を推し量ったり、それ以前の労働時間については本人による控えがあった模様で、それに基づいての遺族側の主張を参酌していることが伺えます。

本件は資料が典型な形とは異なる様々な形で存在していた例ですが、その中での事実認定の例として意義深いものがあるように思われます。…