Tag ‘労働契約法’

青山学院大・高等部・中等部等の教職員の一部が、一時金の減額を違法として差額を請求して、学校法人青山学院を提訴

青山学院大などを運営して著名な学校法人青山学院が、賞与に当たる一時金を例年よりも減額して支給したところ、昨年末に、教職員の一部がこれを違法として差額を請求して東京地裁に提訴したことが明らかになりました。

青山学院は一時金の金額について算出方法を就業規則に定めていたとのことでそれを削除したうえで、これまでの実績よりも少ない支給を行ったとのことです。したがって、本件は、就業規則の不利益変更の問題ということになります。

使用者が就業規則を不利益な方向に一方的に変更してしまった場合は労働契約法に規定があります。

労働契約法

第10条 
使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。

要するに不利益変更が合理的といえるかということになり、上記の規定中に現れている事情の総合考慮ということになります。報道からうかがえる事情で法律上意味を持ってきそうな事実は、経営状態、金額を算出する内容を削除したということ、組合との話し合い程度、削減した金額の多寡などということになりましょう。

もっとも本件には特徴的なところがあります。一般的によくある給与が減額された場合の争いでは、当然、不利益になった金額の多寡が検討されますが、これは給与の内容を引き下げる変更をしているためで、金額の多寡は変更後の規定の内容そのものであるのです。

それに対して本件は算出方法自体をなくしてしまって、そのうえで適宜の金額を支給しているので、金額の多寡とは別の問題となる可能性があります。本件はこの点が特徴的といえると思われます。…


群馬大学、研究者に対するパワハラで教授を懲戒解雇

群馬大学でパワハラを理由に教授が懲戒解雇された事案が発生したことが明らかになりました。

群馬大学による直接のリリースはないため報道によると、事実として認定されている行為は以下のようなものとされています。

  • 退職や休日出勤を強要
  • 長時間にわたり叱責、侮辱
  • 女性に対し、「結婚は三角、出産はバツ」との趣旨の発言

この結果、上記行為を受けた助教及び講師合計5名のうち、2名が退職したとのことです。また、複数がうつ状態になって休職をとっているとのことです。

群馬大学は、当初、諭旨解雇にしようとしたところですが、拒否したため懲戒解雇としたとなっています。諭旨解雇は、法的に正確な定義があるわけではありませんが、一般的には期限を定めて退職届の提出を促し、提出がされない場合には懲戒解雇とするものであり、群馬大学の厳しい対応が伺われますが、一方でここまで事象が積み重なってからの処分であり、もっと迅速な対応をするべきだったのではないかとの批判も出ている模様です。…


グルメ杵屋、非正規雇用の社員のうち5%を限定正社員に登用

非正規雇用の待遇を改善する動きが広がってきていますが、特に人手不足感の強い外食産業では顕著であり、グルメ杵屋は、非正規雇用の社員のうち5%を限定正社員に登用して、普通の正社員を他に振り向けるという人事政策を講じることが明らかになりました。

報道からまとめるとグルメ杵屋の非正規雇用の限定正社員化の内容は以下のようなものです。

  • パート・アルバイトの約440名(5%程度)を短時間勤務の正社員化
  • 短時間勤務の正社員は、1日4時間から6時間の勤務を想定
  • 給与体系は普通の正社員とは異なる
  • これを実現するために人事制度の変更を行う

限定正社員は、安倍内閣が規制緩和の中で言及されて以来、活用例が見られるようになってきました。

助成金が整備され、限定正社員の制度を設けて非正規雇用からの転換をすると、助成金が出るようなものが設けられており、政策的な後押しもある程度行われています。このような情勢から今後も同様の動きが続くものと思われます。

参考サイト

キャリアアップ助成金 |厚生労働省


有期雇用の無期転換制度の例外は,専門的知識を有する労働者と高齢者の継続雇用の場合に限定される内容で特別法制定へ

労働政策審議会建議「有期労働契約の無期転換ルールの特例等について」を公表します(厚生労働省発表) | 労務アップデート|人事・労務管理に関する総合情報サイト」の解説記事をお送りします。

規制緩和の一環で検討されていた有期雇用の無期転換ルールの例外について,法律案の要綱が厚生労働大臣から労働政策審議会に諮問され,おおむね妥当との答申がなされました。

これまでの流れについて簡単にまとめますと以下の通りです。

まず,2月14日に労働政策審議会から,高収入かつ高度な専門的労働者と高齢者の継続雇用についてだけ労働契約法の無期転換制度の例外とする内容で建議がなされました。

労働政策審議会建議「有期労働契約の無期転換ルールの特例等について」を公表します |報道発表資料|厚生労働省

例外扱いは,一律ではなく,高度な専門的知識等を有する労働者と,高齢者の継続雇用では異なることになりました。

  • 「一定の期間内に完了する業務に従事する高収入かつ高度な専門的知識、技術または経験を有する有期契約労働者」
    上限10年
  • 「定年後に同一の事業主またはこの事業主と一体となって高齢者の雇用の機会を確保する事業主(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律における「特殊関係事業主」)に引き続いて雇用される高齢者」
    通算期間に算入されない

この建議についてそのままの内容で法律案要綱が諮問され,おおむね妥当と答申されました。

「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法案要綱」の諮問と答申 |報道発表資料|厚生労働省

この結果,今国会に特別措置法が提出され平成27年4月の施行を目指すとされています。

上記の専門的労働者については,さらに年収の要件などが厚生労働省令で定められることになります。

 

平成25年4月から施行されている高齢者雇用安定法に基づく65歳までの雇用義務に対する対応として,いったん退職してから継続雇用制度に基づいて再雇用した場合には,嘱託などの名称で有期雇用を用意している例が多くなっていますが,その場合に5年を超えて雇用してしまった場合に無期転換してしまうことは起きないように手当がされることになりました。

この法改正ですが,特別措置法の制定という形になり,労働契約法そのものはそのままということになります。…